開発者の想い
大澤 邦雄[おおさわ くにお]
Remember
私がプレスタイム社の設立準備をしていた1974年頃の研修の多くは、講義方式による一方的に「何をどうすればよいか」という方法論を教え込む「How to研修」が殆どでしたが、私が体験したJICE(※1)主催の体験学習によるヒューマンスキル研修は、行動科学をベースにした人間および人間関係に焦点を当てたもので、「自ら考え主体的に行動する」ことを学ぶという画期的な研修プログラムで、私はすっかり虜になってしまいました。そして、JICEの研修で出会い意気投合した日本航空・整備訓練所長の大木さん、知人の南山短大教授の星野さんと共に、JICE所長であり、日本におけるラボラトリー方式による体験学習の始祖である柳原 光先生(※2)に、体験学習の様々なワークのマニュアル化を進言しに先生の自宅に行きました。ところが…
『皆さんは、人間関係という難しい問題をマニュアル本にするというのですか!』
『人間関係のプロセスを文字にできると思っているのですか! 帰って下さい!!』
と一喝されてしまいました。
普段は柔和な柳原先生の顔が、この時ばかりは鬼気迫るものがあり、私たち訪問者は、柳原先生の自宅(立教大学構内)から年末の寒風に吹かれながら、すごすごと池袋駅に向かいました。
*1…JICE(ジャイス):立教大学キリスト教教育研究所
*2…柳原 光(立教大学文学部教授・JICE所長)1995年卒去
それから1年、大木さんと私は「JICEが提唱する個人の主体的な気づきをベースとした体験学習による人間関係トレーニングの社会的な意義」を前面に押し出して、何かと機会をつくり柳原先生の説得に当たりました。
1975年春、先生から『マニュアル本を創りましょう!』との電話をいただき、私はしばらく絶句して「これから伺います!」という言葉だけを伝えて事務所を飛び出しました。
その後1年ほど執筆と編集を柳原先生とJICEの方々と共に紡ぎ、1976年4月1日に「Creative O.D. 第一巻」の発売に漕ぎ着けました。
この時は、嬉しかったです!良好な人間関係づくりをベースにした組織開発(O.D.)のための体験学習マニュアルができたのです。本当に嬉しかったです!
柳原先生もJICEの方々も大木さんも完成したマニュアル(Creative O.D.)を手にして、「これは素晴らしい傑作だ!」「ラボラトリー方式による体験学習を世の中に普及できますね!」と大変満足をしていただきました。
お客様の反応もすごく、「よくぞこんな素晴らしいマニュアルを創ったね!」と多くの方々から絶賛を頂きました。
以降、16年の月日を重ねて「全五巻」を完成させ現在に至りますが、教育・研修担当者の方々からは、知る人ぞ知る「座右の書」・人間関係トレーニングの「バイブル」などと言われるようになり、今では、企業や団体だけでなく様々なワークショップや学校、市民活動などでも使われるようになりました。
私としては、会社や地域社会・そして家庭内にも、ますます広がってきている人間関係の不毛や無関心、信頼関係の不成立による様々なトラブルが毎日のニュースを賑わす現在、このクリエイティブO.D.の普及および正しい使い方を全力を投入して広めていかなくてはと覚悟を強めております。
柳原先生がおっしゃっていた言葉が、時代を超えて響いて聴こえてきます。
時は流れ人は変わっても、関係的存在としての人間の、
「関係」への根源的希求は変わらないばかりか、ますます深まっているように見えます。
今こそ、体験学習による人間関係訓練が必要である」と思われます。(柳原 光)
記:株式会社プレスタイム創業者 大澤邦雄